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エアリス誕生日記念SS:第五弾 

エアリス誕生日SS最終更新&バレンタインデー更新。


一人取り残され、ライフストリームに還元されることも許されないエアリス。
その辛さと孤独を癒したのは……
誕生日とバレンタインデーを一緒に、エアリスに愛を。
タイトルは『愛を語る人』。
エソラゴト様より語る人で五題から頂きました。

それでは続きよりどうぞ。



愛を語る人(エアリス)


 ここは思い出ばかりのごみ箱だ。
 そんな風に、今いる場所を蔑み始めたのはいつのことだろう。
 エアリスは自分にまとわりついて来るようにたゆたう、薄緑の光から身を守るように丸くなり、ただ膝に顔を埋めていた。
 幸せの快さ、心残りの悔しさ、愛した者への慕情、強烈な憎しみ。光の全てがそんなものを内包し、エアリスの心の琴線に触れては消える。その繰り返しは止むことがなく、終わりも見えない。
 ここに、ライフストリームに溶け込めず、星を見守るものとして存在して、幾年が過ぎたのか。
(もう、いやだ)
 星の声から耳を塞ぐ。それでも心とつながる命の循環は、彼女の体を貫き、思いの丈をぶちまけて勝手に過ぎ去ってゆく。
(還りたい。還りたいよ、お母さん。星に還して、私、もう、セトラは嫌だ)
 最初の頃は良かった。彼女を知り、覚えてくれている存在がいたから。
 けれどその仲間たちも年老いて、生命の営みに逆らうことなく星に帰り――
 気付けば、エアリスを知る者は誰としていなくなっていた。

『お姉ちゃんだあれ?』
『私、エアリス』

 地上に降り立ち、そんな会話を繰り返すことにすら疲れを覚えた。知り合ったところで皆、自分のことなど忘れていくのだから。
(セフィロスだって、大人しい。だからもう、いいよね? 私、いなくても、いいよね?)
 そう何度問いかけたことだろう。だが、星からの返答はなく、動きもない。あるのはライフストリームの見慣れた光の流れだけ。
 エアリスはただただ、胎児のようにうずくまり続けた。
 時の概念もなくなり、感情すら平坦になっていくのが虚しさを通り越し、当たり前のように思えていく。
 ぼんやりと頭を空っぽに出来れば、どんなに楽だろう――しかしセトラとしての性か、星たちのざわめきは彼女を休ませはしない。
 ……いい加減にして!
 憎しみと慈しみと悲しみと孤独でおかしくなった声で叫ぼうとした、その時。
(――)
 声が、聞こえた。
(今、誰か、私を呼んだ?)
 名前を直接呼ばれることなどあまりに久しぶりで、その声が己の名の単語を呼んでいるのだと気付くのに数秒かかる。
 喜びと、でも少しの哀しみがない交ぜになった感情が、彼女の心に触れてはそっと、消えてゆく。
 どこか甘い、霧のような奇妙なそれに、エアリスはゆっくりと顔を上げた。
「……あ――」
 緑の光、それ一辺であったはずの景色が、変容している。
 さわりと揺れる草原。
 どこまでも澄み渡る青空。
 遠くに見えるのはさざ波を繰り返す、広い海。
 時折見え隠れするのは、愛する色とりどりの花々だろうか――
 緑一辺であったはずのライフストリームの中が、まるで地上のようになっていた。
「何……これ……」
 エアリスは茫然と景色を見渡す。
 その風景は見覚えがある場所だった。
 そこは昔の――彼女が初めて見た外の世界、カームの町の近くの草原だ。
 心が、揺れる。手が震え、足に力が入らなくて、たたらを踏む。
 数百年? それとももっと前に消えたはずの景色に、エアリスの胸は――
(エアリス)
 鼓動が早まり、思わず胸を抑えた刹那、再び自分を呼ぶ声が耳朶を打つ。
 それは、あまりにも聞きたかった声の一つで。
 怖くて、けれどどうしても確かめたくて、ゆっくりと。
 ……振り返る。
 そこには――
「……クラウド……」
 金髪の、出会ったころと変わらないソルジャー姿のクラウドが、いた。
 そしてその横には、エアリスが何よりも大切にしていた仲間たち。
「ど、うして……」
 呟けは瞼が熱く、ふとエアリスは目頭を指で触れた。
 泣いている。長い間、化石のようになっていた感情が溢れ出し、エアリスの顔を濡らしていく。
 信じられない。
 でも、確かにあれはクラウドだ。ティファだ、バレットだ、レッドだ、ユフィだ、シドだ、ヴィンセントだ、ケット・シーだ。
 昔、あまりに短い人生を、それでも精一杯満たしてくれた存在が、目の前にいる。 
「クラウド……みん、な……」
 零れ落ちる涙を押し戻すように、手のひらでゴシゴシとこすりながら、エアリスはしゃくりあげる。
(また、会えたな)
「うん、会えた……」
(会えて良かった)
「うん……うん」
(何度も何度も、おいらたちはエアリスのことを呼んだんだ。だけどエアリスは、心を閉じちゃってたから)
 レッドの言葉にエアリスは頭を振りながら、
「辛かったの。独りは。だから……」
(独りじゃないわ、エアリスは)
 ティファが優しく言う。
(俺たちゃ何度も生きて、死んで、ずっとオメェの側にいたんだぜ?)
 バレットがてれ臭そうに笑った。
(姿や形は違っても、心は一つだった)
 ヴィンセントの微笑みが、エアリスの心を癒やす。
(オレの子孫なんざ、このオレ様を差し置いて宇宙に行くまでになってるらしいぜ? ったく、ずりぃなあ)
「そう……なの? そういえば最近、外、見てなかった」
(だめだよエアリス~、ちゃんと外に出ないとさ)
「うん、だけど……」
 ユフィの茶化しに、エアリスの胸は痛む。
 変容していき、自分の思い出の場所がなくなってしまうことが、エアリスにはどうしても堪えられなかったから。
 星は確実に良い方向へ向かってはいる。だからこそ、自分が未だここに守人として立てられていることに疑問を持ち、死んでもなお『セトラ』であることに悩んでいたのだ。
(ツォンさんも心配してまっせ。元気出しぃな!)
「ふふ、そっか」
 涙を拭いて、エアリスはもう一度、クラウドを見つめた。
 青い瞳、とんがった金髪の髪。鋭いけれどどこか弱気な、そのまなじり。
(エアリスが教えてくれただろ? 『独りじゃない』って)
 翳りの消えたその顔は、エアリスと二人、ウォールマーケットへ行くすがらであった会話の中で見た笑顔、そのものだ。

 ――ああ、私、独りじゃなかったんだ。
 
 エアリスは、命の循環を理解したつもりでいた。
 セトラとしての役割を、星のさざめきを聞き、見守ることがどういうことか、ちゃんと分かっていたつもりだった。
 だが、事実は違う。
 命が生まれ、死に絶えても、その魂は記憶として残ることを――
「忘れてた。……私、独りじゃないって、忘れてたよ」
 どんな姿に生まれ直しても、クラウドが例えばどこかの可憐な少女になろうとも、ティファが凛々しい青年になろうとも、その魂と記憶は受け継がれる。星は、そのことをエアリスに教えた。
 今こうして、彼女が愛した者たちを形作ることによって。
 星の偉大さ、ライフストリームの素晴らしさ、慈しむ心。それらを感じることが『セトラ』としての役割なのだ。
 エアリスはもう一度、乱暴に涙をぬぐった。
 久方ぶりに泣いたせいだろうか、心の中がとても清々しい。まるで雨上がりに感じる大気のように。
(もう、大丈夫、だな)
「あのときと、逆になっちゃったね」
 クラウドの言葉にクスリと笑う。長い間唇すら動かしていなかった、そのせいでぎこちない笑顔になってはいただろうけれど、クラウドにはちゃんと伝わったはずだ。
「ありがと、みんな。私、みんなのことちゃんと、見てるから。ずっと、ずっと、見てるから」
 エアリスの言葉に、一人一人が宙に浮きながら近付き、
(疲れたら、休んでもいいんだからね)
(無理すんなよ!)
(眠るときは棺桶以外にしておくといい……)
(当たり前でっしゃろそんなこと! ……あ、派手めの部屋もどうやら落ち着かないみたいでっせ)
(エアリス、おいらたちの祖先、たくさん増えたんだ。見てあげてよ)
(おー、そうだ、オレの曾孫? かそれくらいかが無事に宇宙行けるよう、見守っててやってくれや)
(ねえねえ、今はもうないかもしんないけど、マテリア見つけたらアタシにちょーだい! 約束だよ!)
 優しい声をかけられながら、手を、肩を、頬を触れられる感触。
 エアリスはその暖かさに泣きながら笑い、それぞれの言葉に頷いていく。
 仲間たちは一人、また一人と、再び緑色の光になって消えてゆき――
 最後に残ったクラウドは、辛そうな顔を作り、頭を掻いた。
(ずっと見てたのに、ぎりぎりまで出てこれなくて……ごめんな)
「ううん、クラウドはいつも、助けてくれてる。違う?」
(助けてくれてるのは、エアリスだろ。ホーリーの時も、星痕の時も……)
「まあ、その後も色々あったけど、ね」
(アイツもまだいるのか?)
「うん。でも、だいじょぶ。今はかなり静かだから」
(そうか……)
 クラウドはほんの少し、浮かべた笑みに寂しさを混ぜたような顔をした。
(俺たちがいること、忘れないでくれよな)
 言って、クラウドは逡巡した後、エアリスに手を差し出す。
「……うん。もう、忘れない」
 クラウドの微笑みにエアリスも応え、その大きな手を両手で包むように握った。
 光のように溶けるわけでもない、ちゃんとした体温を、エアリスはしかと感じる。
「ありがとう、クラウド」
(ああ。……また、な)
「また、ね」
 クラウドの姿が、ゆっくりと足元から消えていく。それでもエアリスは孤独に潰されはしなかった。
 自分を包むすべての光に、エアリスを愛してくれた人たちが、エアリスが愛した人たちがいることを、ちゃんと認識できたから。
 それは星の記憶となり、いつでも感じられることを、ちゃんと知ることができたから。
 そうしてクラウドの姿が消え、ぬくもりも僅か程度に残った頃。
 再び、風景が途切れ――
 草原も花も、全てが緑の流れへと変わりきった、その時。
「……あ」
 空から、一輪の花が落ちてくる。
 それは薄い緑に映える、赤い、赤い深紅の花。
「そうよね」
 まるで自分も混ぜろ、とでも言いたげな、けれど控えめな表現に、エアリスは吹き出す。
「見てなくちゃいけないもの、ね。あなたのことも」
 花を手に、エアリスは、自分と同じように星の循環から外されている男のことを思い、微笑んだ。


(みんなが私を思い出してくれる時、私は必ず、側にいるから)


 ――エアリスの浮かべた微笑みは、薄緑色の光の中で一層眩しく、輝く。









***誕生日SS終了ー! ついでにバレンタインっぽく仕上げてみました。
    どこがバレンタインかと言われれば、えーと……
    星からのプレゼント&烏賊のアピール=クラウドたちの残留思念と最後の花
    ってことで認めて下さいお願いします。
    あと、どうにかしてヴィンセントはあの世に逝けたってことで(笑)。
    最後に降ってきた花は、エア誕SS第三話をお読みください。

    エアリス、大好きだ。

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2010/02/14 Sun. 00:11 [edit]

Category:  ◆その他

Thread:二次創作  Janre:小説・文学

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