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エアリス誕生日記念SS:第二弾 

エアリス誕生日までのカウントダウン、二日目!


ツォンさんのお話です。
この作品はぜひ、
See-Sawの『あんなに一緒だったのに』を聞きながら読んでくれると嬉しいです。
タイトルは『現実を語る人』。
エソラゴト様より語る人で五題から頂きました。


それでは続きよりどうぞ。



語る人で5題



現実を語る人(ツォンとエアリス)


 二年前から男は一年に一度だけ、必ず地面に種をばらまく日を決めていた。
 だからと言って、こぼしたそれに土をかけるとか、水をやるとか、そんなことを行うつもりは到底ないのだが。
 そうつい答えたら、いつも花の種をくれる少女は見る見るうちに頬をふくらませ、自分に【入門・誰でも出来る花の育て方】という本を押し付けてきた。
 顔馴染であった、今はもうこの世にはいない彼女に模した髪をしている少女の顔は、幼い時の彼女を彷彿とさせ、結局返すこともできず、その本は自分の私室に置きっぱなしだ。もちろん、手付かずのままで。
 男にとって『種』をまくことは、少女が花を咲かせることと同意義なのだが、男にそれを説明する気はない。
 女々しい儀式めいたことをしている大人の姿など、見せるものじゃないと男はつぶやいて、少なめに譲り渡された種が入った袋をスーツの懐にしまった。


  ○ ○ ○


 男がその儀式を行うのは、今年で三年目だ。
 その日は必ず仕事を早めに切り上げ、上司に許可をもらい、一人で出かける。別に遠出でもないわけで、ヘリや車すら使うこともしない。
 向かうのは、ミスリルマインと呼ばれていた洞窟にある荒野だ。
 二月に吹く風はまだ冷たく、コートで体をまとっていても冷気は容赦なく男を襲う。立つ土煙に高価なコートは汚れ、革靴には泥がつくものの、それを意に介したことなど男には一度もない。
(確かに怒られるだろうな、こんな中でただ種を落として後は放置している、などと答えたら)
 詰襟のコートの奥で独り笑い、男はポケットから煙草を取り出し、火をつける。
 風に流れていく煙は、吹き飛ばされてしまいそうな靄のようだ。
 ミスリルマイン近くの荒野はなだらかな丘になっており、そこからは半壊し、現在復興中の元神羅カンパニーがよく見えた。
 だが、復興中といっても賑わいがあるわけではない。大抵の人々の顔は重苦しく、町もまたどこか、沈鬱な空気に飲み込まれている。
「虚栄の繁栄を遂げていた罰か」
 詩人じみた物言いに、つい自嘲が籠っていることに男はまた、苦笑した。
 一人小さく頭を振り、煙草をくわえたまま歩き出す。
 大して経たぬうちに目的の場所にたどり着くと、黙って懐から種を取り出し、毎年繰り返す儀式を行おうとして――
 止まる。
「……冗談、だろう」
 つぶやいた拍子に、煙草を落とした。 
 荒れ果て、岩が転がり、えぐれている大地に煙草は転がり、その灯は消える。
 しかし男はそれには目もくれず、ただ目の前のとある箇所だけを見つめていた。
 多少の泥と巨大な岩の群れに囲まれた中、異彩な明るさを放つ、ただその一点に。
 男が毎年繰り返し、一年にたったの一度だけ種をまくそこに、緑の小さな芽が生えている。冷たい風に耐え忍ぶように、すっくと、空から漏れる陽光を微塵も逃そうとはしないしなやかさで。
 二年前も、一年前も、何ら変化がなかったそこに、今ははっきりとした変化の兆候がある現実が、男には信じられなかった。
 男はどうしていいのか分からず、しばらくの間立ち尽くした。上司や同僚が見れば、呆気にとられたことだろう。神羅の影の任務を数多くこなし、実績を積み重ねてきた人間が、自失して動けなくなるなど、男の周りにいる人間の誰一人として想像できまい。
 男はやはり、どうしていいのか分からなかった。
 男は泣けない。泣く立場にない。だからこそ、種をこぼし続けていたのだ。自分の涙を流す代わりに。
 最後に見た、自分のために泣いてくれた彼女の顔を忘れないように。
 ――だが。
「……強いな」
 そうであることを、男は忘れていた。
 それらは悲しみと衝撃と――それらで無理やり作りだした、忘却だ。
「君も、この星も、本当に……強い」
 男は躊躇ったのち、小さなその新芽に触れた。柔らかく、しなやかなその感触に、泣き出しそうになる。
 時は流れ、季節が何度めぐっても彼女は帰ってはこない。死者が生き返る、そんな奇跡などこの世界にはないのだ。 
 けれど、この世界は生きる。彼女は死んでも、世界は生き続ける。
 彼女が慈しんでやまなかった、この星は――
 これから自分たちが返していくべき『負債』を受け取る相手を残してくれた、あの顔馴染みの少女に、男はただ感謝する。
 男は、今しがた取りだした種が乗る手のひらを見つめた。
 小さく、麦粒にも似た種。時にはコンクリートから、時には煉瓦から、そしてときには記憶の底から優しい思い出を咲かせるそれらの、なんとか細く、頼りないことか。
(違う。それは、見せかけだ)
 現にこうして、劣悪な環境の中で芽吹いた生命があるではないか。
 彼女の咲かせた生命の営みが、絶え間なく続いているではないか。
 それなら、と男は立ち上がり、眼下を見下ろした。
 壊滅した世界の中で、それでも生きようとする何かがあるなら。
「……私も君たちのように、強くありたいものだ」
 風がひときわ大きく吹いたその瞬間を見計らって、男は手のひらを宙に差し出し、種を解き放った。
 いつか彼女の生き様が、世界のあらゆるところに芽吹くように。
 そして、自分の思い出がまた一つ、増えるように――そう願いながら。
 まるで誰かの手に運ばれるように上手く風に乗り、遠く、遠く消えていくそれを見て、男は軽く微笑み、踵を返した。



 ……男の、ツォンの思いに応えるかのように吹いた風は、優しく新芽を揺らしている。









お題配布元→エソラゴト様

***ツォンさんは泣けない人間だと思ってます。
    社長らが症候群治してたところの名前忘れました……ドコダッケー
    やっぱり私の中でのツォンエアソングは『あんなに一緒だったのに』だなぁ。

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2010/02/04 Thu. 00:32 [edit]

Category:  ◆ツォンエア

Thread:二次創作  Janre:小説・文学

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