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光、あれ 

エアリスとツォン。
ひとこまに込められたエアリスの願い。



○光、あれ○



 空に、月。土には、血。
 ――浅く、荒い男の息が、誰もいない周囲に霧散し、溶け消えてゆく。
 空の月は満月だった。丸く、ふくよかで、どこか女性的な優しさを感じさせる、その淡い光。
 月光が周囲を照らしている。
 世界が光に満ちている。
「……ああ」
 男は、笑う。
「君の言ったとおりだよ」
 月を見て。世界を満たす、仄かな淡い輝きを見つめて。



 ――思い出すのは、優しい記憶。



 朽ち果てた十字架。割れたステンドグラス。ぼろぼろの長椅子――そこは、教会とは名ばかりの廃墟だった。
 日の光など当たることのないミッドガルの地下、しかしそこにおいてこの教会だけは特別だ。そのことを男は再三、見せ付けられてきた。
 今もそうだ。男の目の前には、電光ではない、全く別の光が漏れ出ている。
 星の命とも言うべき『魔洸エネルギー』が。
「……君は随分、ロマンチストになったものだな」
 『世界は光に満ちている』。
 そう言い切った女に放った言葉は、ともすれば嘲りをもすら含んでいたかもしれない。
「貴方なら、そういうと思った」
 しかし女はくすくすと笑い、その淡い緑色――優しく、それでも深い翡翠のような瞳を細めた。
「でも、ね。これ、ほんとのことよ。真実なの」
「この世界が? 光に?」
 男の唇が、歪む。
 確かに、ここならばそうかもしれないが――そう付け加え、改めて男は周囲を見渡した。
 ミッドガルでは咲かないはずの花が、しかしここでは色鮮やかに芽吹いている。種類はなんだろうか、ともかく無造作に無秩序に、生命の混沌を表すかのように。 
 男は花を見つめ、それから花畑の中央に座る女へ視線を戻した。
 栗色の髪。猫のような、好奇心に満ち溢れた翡翠色の瞳――そんな容貌をした、昔からの古い、知人に。
「……古代種の生き残りとしてそう思うのならば、あながち外れてはいないだろうな」
「そうじゃ、なくて」
 ゆっくり頭を振り、小首をかしげる。その顔は年不相応に幼く見え、だからこそ男は心のどこかで安堵した。
 変わらない――昔から変わることのない女の様子に。
「上手く説明できないんだけど……光はね、希望、なのよ」
「突拍子もない」
「じゃ、未来、でもなんでもいいけど、ともかくそうで――」
 女は花に手をやった。
 薄桃色の、柔らかそうな花弁を慈しむようになでながら、
「だから、ね。世界には光が満ちてるの」
 男は返答に困り、眉根を寄せた。
「……理由にも説明にもなっていないんじゃないか?」
「え! そう? わからなかった?」
 大仰に驚く少女に、男は溜息をつきながら頷く。
 それでも男は、ますます安らぎを覚え、二人だけの空間を貴重に感じる。
 ――この空間からもたらされる時間だけが唯一、彼女と男が共有できるものだから。
 唯一。そう、ただ一つだけ。
 背中合わせの男と女に、時間以外のなにものも合うことはない。
 男は嘆息した。
「こんな世界が光に満ちているなんて――どこをどうしたらそんな考えが出てくるんだ?」
 男は心底意外そうに言ってのけた。
 実際、そうだ。女の境遇を考えれば、そんな台詞を吐けるとは到底思えない。
「貴方は?」
 だが、女はそれに答えることなく微かに微笑み、男の顔を覗き込む。
 悪戯をするときのような、相手を値踏みし、試すかのようなそのしぐさ。
「貴方は、そんな風に思ったこと、ないの?」
 淡い輝きを放つ翡翠の瞳が男をじっと、見つめている。
「……私?」
「そ」
 光にとらわれる。
 引きずられていく。
「……私は……」
 脳裏に浮かぶ様々な時間の記憶。血と硝煙。悲鳴と怒号。脅迫と懇願。
 ――男の世界は、闇だった。
「私は、そう思ったことは、ない」
 その声の何と冷たいことだろう。
 だが、突き放すようなその台詞も、少女の瞳を揺るがすことは出来なかった。
「……そっか」
 女は真顔になり、手を後ろで組んで足元を見つめた。だが、それは悲しんでいるのではない、何かを考えているときの仕草なのだ。
 男にはそれがわかる。長年、女と時だけは共有してきた男には。
 ――再び女は顔を上げる。
 いつもの笑顔で。
 いつもの明るさで。
「貴方にも光、見えたらいいのに」
 その笑顔があまりにまばゆく、男は目を細めるために微笑んだ。
 子供の戯言を受け流す、余裕の大人なふりをして。
「……そうだな。見えたらな」
 少なくとも私には、君と同じ光は見ることはできない――
 そんな感傷をすら、微塵にも感じさせずに。


 歪む視界の中、薄れゆく意識の中、蘇る記憶にようやく男は理解する。
 世界に満ちる光とは何かを。女が何を、光として見ていたのかを。
 空に、月。
 優しい光。
「私がタークスを辞めて――神羅から離れる……。
 もしくは君が、こちらに……いや、それはないな、君のことだから」
 満ちてゆく光に顔が緩む。誰も見ていないところで浮かべる微笑みは、自分で思った以上にぎこちない。
 男は掌を見た。べったりと血が張り付き、離れそうにもなかった。そう、男が生きていた世界とも切って離せぬように。
「あのソルジャーがやられる……セフィロスが、斃れる……神羅が、無くなる……」
 ああ、周囲を満たす月光以上に、この世界は光に満ちている。
「……君の言ったとおりだな、エアリス」
 可能性という、確かな光に。
 だが――男は女と同じ光を見ることは、出来ない。
 次第に下りていく瞼のせいで、男は再び闇へと引きずられていく。落ちていく。


「ツォン」


 黒に満ちた世界の中、優しい声が一瞬光り、そして――消えた。


 


 


*ツォンが死んだと思って書いたらこのざまです。
 大昔の作品。

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2010/01/17 Sun. 15:52 [edit]

Category:  ◆ツォンエア

Thread:二次創作  Janre:小説・文学

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