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何が如何とかそんな事は私には如何でも良くて 

ようやく書けた、サイアスとフィーのお話し。
三部作となっております。
これはその一部目。ので、ちょっと?なところがあるかも。

サイアスとフィーが夫婦になっています。
死ネタ。グロくはないですが、苦手な方は注意。
そしてこの二人って……
と思われた方もバックプレーズ。
うちのサイトはサイアスとフィーが中心なのです。

お題は人類滅亡日様から借りています。


それでは大丈夫な方はどうぞ。

Φ何が如何とかそんな事は私には如何でも良くてΦ


「だいじょうぶ」

「だいじょうぶだよ」
 己の腹に手を当てそう繰り返す彼女の声にはなんの悲壮も、憎しみも、苦しさもないように思えて、だからこそこの豪奢な――しかし二人の背負う地位に比べれば、あまりに慎ましい――部屋には不釣り合いに聞こえた。少なくとも、彼女と対する男はそう感じた。
 そんな思いを抱くことこそ、彼女に礼を失するなにものでも無いと言うのに。
 ぐ、と彼女が吊り上げた唇の隙間から、堪らずこぼれた呻きに男は目を細める。
 それは魂の軋みと同じだ。
 彼女――目の前にいる男の妻は、胎に残った業火に今、焼き付くされようとしている。
 業火の灯火を残したのは、男自身に他ならない。
 彼女が孕んだ炎の血筋は、母体が纏う風精に煽られてのことだろう、未だに止むことをしなかった。
 男の視線が、彼女の背後に移る。赤子用の揺りかご、そこに眠る二人の子に。
 愛の結晶、などという代物でも、ましてや稀代の後継者と呼ばれる存在でもない二人の子は、それを知ることもなく安らかに眠っている。
「心配しないで。どうせまた、すぐに、会えるから」
「……ええ、そうですね」
 長い赤毛を微かに震わせ、男は妻に頷いた。
 窓から射し込む光はあまりにまぶしく、強すぎて、男の顔を霞ませる。それが彼女には少し、悔しい。男の顔、いつも己を戒めるかのように引き締められているその顔くらいは、彼女は確かに愛していたのだ。
 開け放たれた窓、無造作にたなびくサテンのカーテンにすがり付き、それでも膝を屈することなく彼女は深緑の短髪を風に揺らし、笑う。
 極寒の大地、シレジア。そこを統べる現国王である兄に懇願し、与えてもらった二人の――今や三人の家。ごくたまに訪れる天馬騎士の友人が、部屋の狭さにぼやいていたことを思い出した。
『王女たるあなたがこんな場所に住むなんて』
 ことあるごとに、非難するがごとく怒りを露にしていた友人の言葉を、彼女はいつも笑って聞き流した。
必要なのは二人の、男女の営みをはばかることなく行える場所で、正直あばら屋でも馬小屋でも、彼女としては男と共に住めればどこでもよかったのだから。
 生活臭が多少は残る部屋の中、言葉もなく、ただ風だけが吹いている。彼女と男の間を塞ぐように、否、彼女を守るように少しずつ、強く。
「あ」
 脂汗を滲ませ、彼女はついに両手で腹を抑えた。男にはその奥に――胎の中で悦び躍る炎精が見えているのだろう、多分。
「もう、だめかも」
 ふらつく足を叱咤して、彼女は男に歩み寄る。後ろにいる子に、決して害が及ばぬようにと。
 祝福すら受けておらぬ我が子、今はまだ母にしか望まれておらぬであろう愛しい、炎の血筋を引くその子だけは、彼女はどうしても守りたかった。守らねばならなかった。
 ああ、と彼女は嘆息した。
 胎が、体が、内からじわじわと焦がされてゆく。凄まじい魔力に翻弄され、意識が飛びそうになるのを堪え、彼女はようやく見えた夫の顔に触れた。
 赤い瞳、少し、痩せ気味の頬。紅の髪の毛が風に揺られ、彼女の体をくすぐる。
「私は」
 その瞳を、己の翡翠の目に刻み付けるように見つめ、
「少なくとも、嫌じゃなかったよ」
 あなたの顔もその力も。
 そう言って微笑むと、夫である男は苦笑を漏らし、彼女の汗を拭うように額をなぞる。
「わたくしも同じです。少なくとも、嫌ではなかった」
「良かった」
 私は間違っていなかった、そんな風に思った直後、胎に残っていた炎が、瞬く暇もなく弾けた。
 点滅する視界、刹那に続く激痛に彼女は身を反らす。
 声すら出せない衝撃に、彼女はありったけの理性と矜持を使い、耐える。自ら望んだ結果を悔いるなど、そんなことは許されない。誰が許そうとも、己だけは絶対に許さない。
 男の視線を一身に浴び、彼女は悶え、部屋をさ迷う。風に煽られ、天にたゆたう煙のように。
 絨毯が、机が、扉が、彼女から飛び出し舞い躍る炎精に焼き焦がされてゆく。
 二人が短い間共に歩み、互いの道を一つにした痕跡、それすら残さぬように強く、激しく、熱く。
 視界を覆う灼熱の炎の中で、彼女は自分に残されたほんの少しの時間を、我が子が辿るであろう路を祈ることに費やした。それとは比べものにならない程度に、体を重ねた男のこれからを案じたのは、微かに残った情からかもしれない。
 彼女の肉体が炭となり、魂は既に風精と化してもなお、その響きが残るまでずっと。
 彼女はただの母として、我が子のことを思い続けた。

  § § §

 ――シレジア現国王セティの実妹にして王女たるフィーが、その夫、元シレジア宰相サイアスに殺害されたと報じられたのは、それからしばらくしてのことである。
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2012/01/11 Wed. 20:01 [edit]

Category:  ▲サイアスとフィー

Thread:二次創作  Janre:小説・文学

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