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ねじれた向日葵(アーサー→フィー)  

花の自作お題第一弾。

アーサーから見たフィー。
彼女が手に入らないことを理解してしまうアーサー。
それでも彼は。


アーサーの一人称です。
アーサー→フィーな感じ。シリアス。
続きからどうぞ。

Φねじれた向日葵Φ


 
 『それ』が無理だ、と本能的に悟ってしまったのは、奇しくも彼女に恋心を抱いていると頭で理解してからだった。

「あら、おはよ、アーサー」
 一人早めの朝食を終え、木陰が涼しい石の階段にぼんやりと腰かけていた俺を見つけたのは、他でもない、相棒の天馬騎士フィーだ。
 翡翠に似た短髪を風に遊ばせながら近づいてくる彼女は、俺を見つけるのが誰よりも上手い。
 俺がどんなところにいようとも、彼女は俺を見つけてくれる。
「……おはよう、フィー」
 屈託なく、明るい笑顔で挨拶をしてくる彼女に、けれど今日の俺はぎこちない返事をすることしかできなかった。
「やだ、なに暗い顔してるの朝っぱらから」
「暗い顔、してるか?」
「してるわよ。すっごく辛気くさい」
「ああ……朝飯の何かに当たったのかもな」
「あっ、何よ! 先に食べたの? ずっるぅい」
 今度は一転して不満の顔を作るフィーに、俺はつい、吹き出してしまう。
「ちょっと。もう、笑わなくってもいいじゃない!」
「いや、そういう訳じゃなくてさ……ごめん」
「じゃあどういう意味なのよ、まったくっ」
 腰に手を当て憤慨するフィーをなだめながら、俺は改めて相棒――いや、恋心を抱いている少女の顔を見つめた。
 俺やフィーの実兄セティ、仲間たち。解放軍の中にいる時のフィーの様子は、向日葵みたいだと揶揄されている。
 夏の日差しを燦々と浴び、まばゆい太陽にも怯むことなく頭を上げる、明るさの象徴のような。
 いつでも朗らかで、お人好しで、笑顔を浮かべているムードメーカー。
 それが、回りのフィーに対する評価で――事実、俺もそうだと思っていた。
 ……けれど。
「お、いたいた、おい、フィー!」
「あれ? デルムッドさんだ」
 俺の心の痛みなど当たり前だが露知らず、フィーは俺から目を外し、駆け寄ってくるデルムッドへ軽く頭を下げた。
「こんな所にいたんだな。探してたんだぞ」
 言って、ちらりと俺とフィーを交互に見やり、
「……逢い引き?」
「違います!」
 からかうような口調に、フィーは頬を真っ赤にしてキッパリと否定する。
 意地の悪い笑みを浮かべ、デルムッドはもう一度俺を見た。
 ショックでも受けたと思っているんだろう。実際、少し前の俺ならそうだったかもしれない。
 けれどもう、今の俺はその程度で動揺するたまじゃない。
 ――もう、知ってしまっているから。
「それより何かフィーに用があったんじゃ無いっスか」
 余裕のある苦笑を返して話を逸らすと、ああ、とデルムッドはフィーへ向き直る。
「フィー、レヴィン様が呼んでるんだ、君のこと。多分偵察に行ってほしいんじゃないか?」
「……、軍師、様が」
 フィーが呟いた、刹那。
 風の精霊が揺れた。
 揺れる――いや、違う、震えている。
 怒り、悲しみ、憎しみ、苦しみ、戸惑い。抑えきれないほどの激情をフィーから感じ取った風精たちが、ざわめき、呼応するかのごとく彼女の周囲を困惑するように飛び回っているのが分かった。
 が、それでも彼女から風精が消えることはない。
 なぜなら彼女はシレジアを象徴する、風神フォルセティが血を引くレヴィン王の実子なのだから。
「そう。わざわざありがとう、デルムッドさん」
「気にするな、頼まれたからやったまでさ」
「でも探させちゃったんでしょ? ごめんね」
 おののく風霊たちとは裏腹に、フィーはいつもと同じ明るい笑顔で礼を言う。
 普段、俺たちに見せる朗らかな、向日葵のような微笑みで。
「いいさ。じゃあ、レヴィン様のところに顔出し、よろしくな」
「うん。わかりました」
 何か用があるのだろうか、忙しなく背を向け立ち去っていくデルムッド。フィーはその後ろ姿を見つめたまま微動だにしない。
 風が強く吹き、木々の梢を揺らす。
 宙に舞う木の葉とその影。さわさわと耳をくすぐる、小さな音――
 デルムッドがいなくなり、俺とフィーの二人きりに戻っても、彼女を取り巻く風精たちは怯えたままだ。
 それでも、まるで媚を売るかのようにまとわり続ける風霊たちを、俺は健気だと同情することが出来ない。
 ――この風がフィーを縛り付ける楔だと、理解できた今になっては。
 フィーと知り合い、なりゆきもあって解放軍に入った俺は、ある人物と対面した。
 軍師レヴィン。フィーの父親にして、フィーが最も憎む男に。
 母と国、フィーたちを捨て、公子セリスの元で采配を振るう父親と、母を亡くし、戦うために解放軍に入った娘。
 親子らしい会話など交わした様子もないフィーの歪みは、日々日々強くなっていく。
 そんな彼女に、自称相棒の俺は何もできず、あいまいな距離を保ったままだ。
「フィー」
「はあ、もう、やんなっちゃうね、朝から」
 俺が声をかけると、疲労感に満ちたため息をついてフィーはこちらを向いた。
 憎しみも悲しみも無い、あどけなさすら感じさせる拗ねたような顔つきで。
「ゆっくりご飯くらい食べさせてほしいわ……あ、でもセリス様のためだもんね、頑張らなきゃ!」
「あのさフィ、」
「そうだ! あのさ、アンタ私の朝食、取っておいてくれない? 今日、胡桃のパンがいくつか出てるんでしょ?」
 俺の言葉を遮って、フィーはわざとらしい様で両手を合わせる。
 気遣いの言葉を飲み込んで、俺は、それでも笑ってみせた。
「……ああ、いいよ」
 ――ただの気が利く相棒として。
「わ、ありがと! 今度何かお礼するわ」
 嬉しそうに言って踵を返し、颯爽と本陣側へと向かうフィーを見送りながら、
(お礼にフィーが欲しい、とか言ったら、なんて思うかな)
 などと、叶うはずの無い思い付きが虚しくて、俺は頭を抱えるようにうつむいた。
 風の音が、やけにうるさく感じた。

  § § §

 その日の夕方、フィーがもたらした情報によって、解放軍を奇襲するために隠れていた帝国軍の一個小隊との戦闘が交わされた。
 上がる土煙、魔法の輝き、地に伏す骸、おびただしく散る血潮。
 戦場なんてどこも似たようなもので、次第に感覚が麻痺してくる自分に恐ろしさを覚える。
 それでも心情をこらえ、あらかたの敵を焼き殺し終えた俺は、フィーが戦っているであろう方角の空を見上げた。
 太陽はそろそろ没する頃だ。だからこそ俺はフィーを案ずる。日のないときの彼女は、まるで頭を垂れた向日葵のように、生気をなくしてしまうから。
 夜の冷たい風が吹く。髪を弄ぶそれに、ふと、先日フィーと交わした台詞と彼女の姿を思い出した。


(私、風が嫌いなの)

 戦う時の彼女は、高く、高く天に向かって突っ込んでいく。

(ファルコンナイトにはきっとなれないな)

 風を振り切るように、逆らうように、そして何より、空に浮かぶ巨大な炎――太陽に焦がされんとするように。

(ああ、空は好きよ。太陽があるから暗くないでしょ?)

 震える風精をまとわせながら、戦と言う名の衣に私怨を隠し、彼女は槍を振るっては次々に血潮を浴びていく。

(太陽も好き。明るいし、熱いし。だから炎も好き)

 その顔に、いつも浮かべる明朗さなどどこにも無い。

(アーサーの炎って、いいね。暖かい)

 ただただ己のしがらみをも振り切るがごとく、彼女は敵を殺していく。

(……もっと熱ければよかったのにな)

 『風』を切り裂きながら、太陽を背に、体力の続く限り――


 いっそ空気なんて無くなればいいのにねと言ってのけた彼女の笑顔を、俺は忘れられない。


  § § §

 フィーは、確かに向日葵なのだろう。ただしねじれ、ひねくれた、奇形の向日葵。
 太陽を求めるのは本能からではなく、風を嫌い、愛する空の中で最も熱い、己を焦がし尽くす炎を欲するが故の行為だ。
 そんなゆがんだ彼女を、私怨で敵を葬り去る彼女を、それでも俺は愛していた。
 いっそ、俺の炎で燃やしてしまえば良い、そうすればフィーはきっと喜んでくれるから。
 でも、悔しいけれど、残念ながら俺の炎は彼女のしがらみ全てを焦がし尽くすには程足りない。
 だから俺には、無理なんだ。
 ――彼女をこの手に包むには。
 俺は、それを知っている。
 ……知ってしまったんだ。


「お帰り、フィー」
 血臭とようやく落ち着いた風精をまとわせて戻ってきたフィーを、俺は笑って出迎えた。
「ただいま、アーサー」
 応えるフィーの笑顔はいつものように、向日葵のように明るくて、だからこそ俺は思う。
 ――どうか今、俺の目に映る彼女の全てを燃やし尽くせるだけの炎に、フィーが出会えますように。
 そう祈ることしか、今の俺には出来ないから。
 今も、かもしれないけれど。










***向日葵の花言葉=「私の目はあなただけを見つめる」「崇拝」「光輝」「にせ金貨」

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2010/03/19 Fri. 00:19 [edit]

Category:  ▲アーサーとフィー

Thread:二次創作  Janre:小説・文学

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